リ・アルトネリコ1-雲海に届く祈詩-

ゲーム『アルトネリコ~世界の終わりで詩い続ける少女~』の二次創作作品です。作者はメーカー様とは何の関係もありません。あしからず。
また、『リ・』とついているのは原作に対するお返しというかファンレターというか、二次創作ですというニュアンスです。
シナリオにはアレンジを加える予定ですので、タイトルも変わってます。
上記の点を留意した上でお読み頂ければ幸いです。


000/.[とある音科学者の追憶]

2912/_<エル・エレミア地方のとある協会にて>

 男の前には、花に囲まれた箱の中に納められた、一人の女性の姿があった。
 男は、ぼろぼろと涙を流して、女性の死を悼んでいた。
 その傍らには、男と同じように泣き崩れている幼い少女がいた。
 男は、少女が引っ張る裾の重みに気づいて、ふと顔を上げた。
「……シュレリア」
 男が少女の名を呼ぶと、少女は濡れた瞳を僅かに上へ向けた。
「……ぐすっ、……お父さん。……ひっく」
 男は屈み込み、娘の身体を抱き寄せる。ぎゅっときつく、抱き寄せる。
「一緒に……、がんばろうな」
 覇気も何もない情けない声だったが、シュレリアは何度も何度も頷いてくれた。
 そのシュレリアの想いが伝わったのか、男は再び涙をこぼした。
 しかし、その意味合いは先程までとは少し違った。
 悲しくないわけではない。だが、悲しいだけでもない。
 そこには確かに血の通った想いがあった。
 優しさがあった。
 強さがあった。
 そんな想いが、彼に力を与えた。活力を与えたのだ。

 ただの月奏であった男、エレノが音科学の道を踏み出すのはそれから三年後の話になる。

001/.[イニシャライズ①-Rrha ki ra tie yor ini en nha-]

3770/_<エル・エレミア地方、第一塔『アルトネリコ』上層、使徒の祭壇>

 プシュー、と音を立てながら、使徒の祭壇を閉ざしていた隔壁が開かれる。
 目前に広がるのは白く滑らかな床石と、黒く無機質な壁、そして金属製の荘厳な祭壇だ。
 祭壇といっても、ファンタジーな物語に出てくるような布や木を用いた前時代的な代物ではない。
 むしろメタリックで機械的な造型をしている。
 円形の床石を包み込むように金属製の突起が飛び出ていて、その高さは俺の肩くらいまである。
 見ているだけで、どことなく近寄りがたい雰囲気を抱かせてくる。
「随分と落ち着いているね。さすがにもう慣れたのかな?」
 振り向いて微笑を浮かべながら、声を掛けてきたのは絢胤(あやたね)だ。
 一瞬女性に見まがうような風貌で、口調も優しげだが、れっきとした男である。
 剣の冴えは見事の一言で、ここ一年くらいは稽古でもめったに勝てない。
 幼い頃からの知り合いなので、今更妬んだりはしないのだが、そのことに関してだけはどうにも悔しさを拭いきれない俺がいる。
「ったく、俺より早く出世したからって、先輩振んなよな」
 俺が少し拗ねたように言うと、絢胤は苦笑して答える。
「ははは、ごめんごめん」
 俺はそんな絢胤から目を逸らして、ここにいるもう一人のほうを眺める。
 ふよふよと空中を漂いながら、彼女は毅然とした口調のまま微笑んだ。
 とはいえ、その顔はほとんど外装に覆われているため、口元しか見えないのだが。
「……気に病むことはありませんよ、ライナー。あなたは立派な騎士です。この私が保証します」
「そんな、恐れ多いです、シュレリア様……」
「そんなに畏まらなくても結構ですよ。私たちは、この街を守る《同志》なのですから」
 尊敬するシュレリア様にそう言われては、俺も頷くしかない。
 一介の騎士に過ぎない俺に、そこまでの計らいをして頂くのなら、俺は尚一層、この任務に励まなければならない。
 俺は、決意と共に、腰に差していた剣の柄を握り締めた。

あとがき

◆序幕
始め方は散々迷いましたがエレノさんに決めました。
全ての始まりはやはり彼だと思ったので。
あと、ここで語っておかないと今後書きようがなさそうだったので、それを早速書いたというのもあります。
これは僕の癖なのですが、どうしても壮大な書き出しを考えてしまうのです。
そして、途中で力尽きるという……。
完走する、と自信を持っては答えられませんが、ちょっとずつでも進めて行けたら良いなーと思っています。
ライナーとかオリカが出てくるところまでは書きたいです。
オリカの暴走っぷりを書けたら感無量です。
それでは、次があることを祈って。



to be continued...