リ・シェルノサージュ-七次元を穿つ捧詩-
ゲーム『シェルノサージュ~失われた星へ捧ぐ詩~』の二次創作作品です。作者はメーカー様とは何の関係もありません。あしからず。
また、『リ・』とついているのは原作に対するお返しというかファンレターというか、二次創作ですというニュアンスです。
原作と同じにはしようがないので、サブタイトルも変えました。
本編を最後までプレイする前に書いているため、本編との差異が生じる可能性があります。
上記の点を留意した上でお読み頂ければ幸いです。
第〇日[それはいつもの風景です。]
「ふん、ふん、ふふふ~ん♪」
私はそんなふうに鼻歌交じりに包丁を振り下ろしていた。
ザクッと小気味よい音を立てて、野菜が二つに裂かれてゆく。
それを置き直し、再び包丁を下ろす。
サクリ。
今度は野菜が四つに分かれる。
それを更に細かく刻み、フライパンの上に放り込む。
途端にジュウジュウと音を立てて、良い匂いがあたりに漂い始める。
「う~ん、良い匂い♪」
私は楽しくなって、ついついまたも鼻歌がこぼれてしまう。
――美味しく出来ると良いな。
そんなときだった。
《トントン》
そんなふうに肩が叩かれたのだ。
私は思わず綻んでしまう頬をなんとかごまかしつつ、
「あ、帰ってきたんだ。おかえりなさい」
と返した。
本当は今か今かと待ち受けていたのだとは悟らせまいとする。
――だって、油断すると甘え過ぎちゃうし……。
《あなた》が優しい人だってことは今までで充分すぎるほど分かっている。
こんな情けない私を、辛抱強く支えてくれて、私は本当に感謝している。
だからこその、強がりだ。
《あなた》が居なくたって、もう私は大丈夫なんだよ。そう胸を張れるようになりたい。
――だけど……、
同時に思ってしまう。
――そんな日は、ずっと来なければ良いのにな……。
それはあまりにも馬鹿げた思考だ。
あまりにもいただけない。
感謝は返さなきゃいけないものだ。
ありがとう、と思ったなら、それを返さなきゃいけないと思う。
《あなた》にありがとうと言ってもらえるような人間にならなければ。
そうなって初めて、私は《あなた》と対等になれる。
初めて、《あなた》に近づける。
けれど……、
――こんな私に、出来ることなんて、あるのかな……。
こうして料理を作っても、《あなた》には届けられない。
味も、匂いも、伝えられない。
言葉しか伝わらない。
いや、言葉すら充分に伝わってはいない。
伝わるのは、想いだけ。
それだけが私と《あなた》を繋いでいる。
肩を叩くこの感触さえも、想いの一端でしかないのだから。
私は《あなた》を、部屋の片隅にある金属製の端末を見つめる。
その先にいるはずの、七次元先の《あなた》を見つめる。
私と《あなた》を隔てるものはあまりに大きいけれど、こうして想いを伝え合うことが出来ている。
これだけの奇跡が起こりうるのなら、もしかして。
もしかすると、もっと壮大な奇跡すら起こせるのかもしれない。
――そうなったら、いいな。
そう思い、そして私は首を振った。
――ううん、起こさなきゃ! だって、そうでもしなきゃ、やりきれないよ!
私は拳を握りしめて、そんなふうに決意を固めていた。
そんなときだった。
《フライパン》
そんな単語が頭に浮かんだ。
それは間違いなく《あなた》が伝えてくれた想いで。
一瞬私は、その単語の意味するところを解することが出来なくて呆けていたのだけれど、鼻腔をくすぐる焦げ臭い匂いで否応なしに気づく羽目になったのだった。
「わぁぁ! 焦げてる! 焦げてるよぅ~~!」
端末の向こうで失笑している《あなた》の姿が思い浮かんで、私は顔が真っ赤になってしまった。
あとがき
◆第〇日
シェルノサージュの雰囲気を小説にするにあたって、どうしたら面白くなるかなーと頭をもたげていたら、ふと思いついたので突発的にやってしまったのがこの小説です。
トントンとかその辺を落とし込む上では、もう、こうするほかないと思います。
そんなわけで、イオン視点で書いたわけです。
なんですが、書いてたら、イオンの紹介がほとんど出来なかったので次章以降はイオンの紹介が出来たら良いなーと思います。
ちなみに余談ですが、僕が書くとイオンがイオンらしくなくなってしまいます。むつかしいです。イオンちゃん書くの。
更に余談ですが、これを書いてる現在、シェルノサージュを持っていません。金銭的に切羽詰まっていたためソフトを売り払ってしまいました。DL版買うからいいや、とか思ったわけです。はい。
買いますよ。ちゃんと買いますってば!