(有)り得ないゲーム研究部。

何をするでもない日常系ゲーム研究部コメディ。……どうしてこうなった。



イントロダクション-(有)り得ないゲーム研究部-

 椅子を斜めに傾けて座ることを教師たちは『舟漕ぎ』と呼んでいた。ちなみに僕は『揺蕩う学徒の調べ-ドリーミィ・エンプティ-』と呼んでいるのだが、流行る気配は一向に訪れない。歴史よ、とっとと僕に追いつけ、早く。
 とにかく、そんなふうにブラブラとエンプティってる紅緒(べにお)はなんともなさそうにこう言った。
「そういやひ●らし、……じゃなかった。ヒグラシの鳴き声ってさー」
 え? 何で今伏せたの? 伏せる要素ないよね? ねぇ?
「ホラ、よく『カナカナカナ……』って言うじゃん? あれってさー、絶対聞こえないよねー?」
 一瞬意味が分かりづらかったが、ちょっと考えてみて、言いたいことは何となく分かった。が、もちろん全員には伝わるわけもなく。
「え? なに? どういうことなの……?」
 ついて行けなかったみたいな表情で、有架(あるか)姉が頭上にクエスチョンマークを浮かべている。
「どっちかっつーと、あたしはさ、『クルクルクル……』だと思うんだよねー」
 紅緒は有架姉の質問など気づかなかったみたいに、自然に話を続けている。
 こいつら……、カオスすぎる。僕が教師なら、夏休みの宿題で、協調性という言葉の意味を調べさせてやるところだ。まぁそれ以前にこんな生徒を受け持つこと自体ゴメンなのだが。
 しかし、話の流れから『ヒグラシの鳴き声が『カナカナカナ……』に聞こえない』という、紅緒の言わんとしていることを察したらしい有架姉は少し考えて首を振った。
「どっちかというと『ヒョロロロロ……』じゃないの?」
 それもないだろ、常識的に考えて。それ明らかに鳥類だよね。滑空してるよね、そいつ。
「カナちゃんはどう思う?」
 ナチュラルに僕に振るな。あと、カナちゃんって呼ぶな。紺野要(こんのかなめ)だからね、僕の名前は。それと男の子だし、一応。
 なんて今まで散々言ってきたけど、相手にされなすぎて諦めてきてる僕は、口から飛び出しかけた不満を呑み込んでから、それに応じる。
「『カラカラカラ……』じゃないかな」
「ねーわ」
「ないわね」
「違うよ、お兄ちゃん」
 紅緒と有架姉だけじゃなく、突然話に混じってきた実の妹にまで反論される始末。
 なんでだ。そこまで変なこと言ってないよな。僕、正常だよな。
「有珠(ありす)には、こう聞こえるよ」
 有珠はそう言うと、少し間を溜めた。ゴメンなんかもう既に嫌な予感しかしないんだけど。いっそもう帰りたいんだけどダメですかムリですかそうですか。
「……『お兄ちゃん大好き、抱いて』////」
 顔を赤らめて何言ってるのこの子。
 ごめんなさい。これが僕の妹です。本当にごめんなさい。
 心なしか、僕を見つめる女子たちの視線が痛い。
「実の妹に何言わせてるかなー、この変態」
「……半径30メートル以内に近寄らないでね、この変態」
「……だいじょうぶ。たとえお兄ちゃんが変態でも、有珠は受け止めてみせるから。だから、好きなところに出していいよ////」
 何をだよッ!! 
「何をって、それはもちろんお兄ちゃんの大事なせ(ry」
 もう嫌だ、帰りたい……。僕を平穏な日常に帰してください。それだけが僕の望みです。
「もうっ! 最後まで言わせてくれてもいいのに。お兄ちゃんのいぢわる☆」
 言わせていいわけないだろ! 完全に放送禁止用語じゃねーかよッ!
「……でも、そんな恥ずかしがり屋なお兄ちゃんも、かっこいいヨ」
 おかしい……。どんな選択肢を選んでも妹の好感度がグングン上昇している気がするんだが……。
「ついでにお兄ちゃんの性欲のボルテージも上がって行ってるね」
 そいつはピクリとも上昇してないはずなんだが……。
「今夜はお母さんに見せつけちゃおうね☆」
 お前の妄言をか。そうだよな。そうだって言えよ。
 そして取り巻きの二人の視線がいい加減痛いです。
 僕、一切悪くないよね? 完全に有珠の暴走だよね?
 だからその生ゴミ見るみたいな目を向けるのやめて。

 …………どうしてこうなった。



to be continued...

あとがき -ジ・イントロダクション-

・新作です。飽きっぽくてすみません。これからももっと手を出しまくります。(反省の色なし

・今作は日常系です。中身は全くありません。ひたすらぐだぐだしてるだけです。過度な期待はしないでください。あと画面から3メートルは離れて見やがってください。

キャラクター紹介

・紺野要
主人公。ゲーム研究部員/デバッガー。怠惰な少年にしてプロのドゲザーである。そのあまりの威姿に人は彼を『鋭角の要』と呼ぶ。有架姉が好きらしい。

・紫条有架
ヒロインその1。ゲーム研究部部長/ゲームデザイナー。悪戯好きで演技力に定評がある。どんなことでも人並みに熟せるが、人並み以上には熟せない器用貧乏(ちょっ、それ禁句だから! やめてよもうっ!)。

・紅緒有菜
ヒロインその2。ゲーム研究部副部長/グラフィッカー。天衣無縫のテキトー人間。計算はできない。九九も怪しいとかなんとか(九九くらいできるよ! でも七の段はあたしに訊かないでよね!)。

・紺野有珠
ヒロインその3。ゲーム研究部員/シナリオライター。極度のブラコン娘。年頃なのか性に興味津々(……年頃の一言で誤魔化せるレベルじゃ……「何か言ったかなお兄ちゃry」)。