異世界奇譚~翼白の攻略者~
ある日異世界で目を覚ました俺は、黒髪、着物姿の女の子と旅に出ることになった。見れば見るほどゲームみたいなその世界を救うのが俺の役目だって!? しかもチート能力はおろか、過去の記憶すらなくなった俺には打つ手なんかないじゃねーかッ!! 「だいじょうぶですよ、ツバサ様。無理に頑張らなくても私が一生懸命補佐しますから。一緒に頑張りましょう!」 ……いっそ、このまま養生生活を続けるのもありかなぁ……。っていやダメだろ俺!?
第四羽【王都到着】①
腰だめに大槍を構えたアリシアは裂帛の気合いを込めて、踏み込んだ。
三倍近い体格差のある巨大なトカゲ――というかドラゴン【グラスリザード】を押し込み、動きを封じるどころか引き摺り――もとい押し擦り始めている。
体格差をものともせず、どころの騒ぎじゃない。相手にすらなってないんじゃなかろうか。見た感じは普通の女の子の腕っ節なのに。これがステータス補正というやつか。あるいは気か。そういう類か。
そして……。
「ハァッ!!」
アリシアの掛け声と共に、グラスリザードはひっくり返った。
遠目から見てるとまるで相撲みたいだな。まぁ相手は恐竜さながらのオオトカゲだし。もう一方は一見華奢な女の子だから、違和感バリバリなんだけれども。
そして、仰向けに転がされたグラスリザードが体勢を立て直して立ち上がる前に、もう一人のほうが動いている。
「飛燕、猛襲迅ッ!!」
走り抜けながらの目にも留まらぬ神速の斬撃で、グラスリザードを撃沈させる。
一撃を振るったように見えて、実は連続攻撃だったらしく、複数の傷跡と切断痕を残している。
その死に様は、無駄のない鮮やかな〈死〉だった。
どこかで聞いたことがあるが、殺しに卓越した人間は無駄な殺しをしないらしい。必要以上に屍体を傷め付けることもしないし、殺し損ねることもないとかなんとか。……思い出した、そらからくんだ。
まさしく的確な死が、そこにはあった。
……きっとやろうと思えばオーバーキルもできるんだろうけど、オーバーキルドロップでもなければわざわざやる意味もないし、この世界のシステム的に何もないからだろう、アリシアも菊花に対して賞賛の声を上げている。
「うむ。さすがキッカ殿だな。見事な手際だ。……これなら勇者一向に混じっても普通に上手くやっていけるのではないか……?」
「いえ……。私なんかじゃお役には立てませんよ。それに私にはツバサ様の助けになるという使命がありますから」
「ふむぅ……、そうか。……その使命とやらが具体的に何なのかは、やはりまだ教えてはもらえんのだろうか……?」
「……えっと……。その、すみません……」
「あいや、こちらも失礼した……」
恐縮し合う美女と美少女。
そして、俺はというと……。
……………………。
完全にあぶれていた。
「俺って、……必要なのかなぁ……?」
なんだか寂しくなってしまう。
いっそ、タイトル変えたらいいんじゃないの? 〈異世界奇譚~黒衣の菊一文字~〉でいいんじゃないの?
そっちのが絶対人気出るし。なんならランキングだって狙えると思うよ。
ふん。いいもん、別に……。可愛い女の子たちの活躍を間近で見れるのもそれはそれで楽しいもん。
ホントは寂しくなんかないんだからねっ!
……嘘だけど。
「だいじょうぶですよ、ツバサ様! たとえツバサ様が戦えなくても、私が必ず守り通してみせますから!」
「そうだぞ、安心しろ。平民を守るのは騎士の務めだからな。わざわざ其方が危険に身を投じる必要などないのだ」
咄嗟にフォローに入ってくれる可愛い従者と美しい騎士殿。
俺はなんて恵まれた境遇にいることだろう。
にもかかわらず、俺は自らの存在意義などと細かいことに意識を割いているだなんて、あまりに愚かで下らないというものだ。
……なんて思うわけないだろ。
一応俺だってゲーマーの端くれだ。
自分からゲーマー名乗るとか、ちょwwwおまwww ……とか笑いたいヤツは笑え。
いくら記憶がなくたって、俺の魂まではきっと変わらない。
個人的な情報が欠如していたって、俺の生き様までは変えられない。
たとえ、そこにゲームがなくても。プレイヤーが居なくても。俺はゲーマーだ。
遊戯を攻略する者。白き翼を携えていた、神の生まれ変わり。
〈翼白(よくびゃく)の攻略者(プレイヤー)〉。
俺は、この世界を攻略する。攻略してやる。
そんな風に意地を見せてやりたくなった。
……理由が女の子たちに負けたくないだけっていうあまりにも不純な理由だけど、この際それはどうでもいい。
俺は女の子に守られるだけなんてイヤだ。
いつかきっと、……この子たちを守れるようになろう。
……そういうものに、私はなりたい。
雨にも風にも、魔物にも魔王にも、世界にだって屈しない。
いつか、見返してやるんだ。……そんな風に思った。
……いや、そんな風に思わされた気がする。何にだ……?
「ツバサ様……? ホントに、だいじょうぶですか……?」
「……う~む、調子が良くないなら、横になっていると良い。なんなら栄養たっぷりのお粥でもご馳走しようか?」
少し思案に耽っていると、菊花は心配そうに見つめていて、アリシアはまたも惜しみない女子力を発揮しようとしていた。
……はっ! ひょっとしてこの女騎士様、俺に気があるんじゃないの……?
え、……でもこいつは勇者にホの字なんじゃないの? まさか、奪っちゃった……? 乙女のハートを盗んじゃった……?
私はとんでもないものを盗んでしまったようです。……それは貴方の心です!
「……と思ったが、どうやら大丈夫そうだな」
「そうみたいですね……。それじゃあ、先に行きましょうか」
「うむ。……とはいえ、この先にこれ以上の敵は現れないだろうがな」
「……そうですね。今のがここのヌシのようでしたし……」
あれ……? あれあれー?
おっかしいな。ついに俺に惚れてしまったアリシアと勇者による三角関係ラブロマンス篇に突入するんじゃないの?
「私はそれでも、この男と共に居たいのだ! すまぬ、勇者よ!」みたいな展開が来るかと思って、今から勇者にどういう捨て台詞を吐こうかメッチャ悩んでたのに!
「悪いな、勇者さんよ……。世界はお前にくれてやるが、こいつだけはくれてやるわけにはいかねえんだ……」とかニヒルに告げる案を採用させようかと思っていたのに!
「ツバサ様ー、置いてっちゃいますよー?」
「ちょ、ちょっと待てよ!」
「む、ウルフだな……」
気づけば俺の背後にはフィールドウルフが涎を垂らしながら唸っていた。
「あっぶね!!」
飛びかかろうと一瞬溜めを作っていたところへ、どうにか抜刀した剣をぶち込み、初手を俺のものとした。
そこから蹴りを食らわせて距離を離し、掲げたアイアンソードをそのまま眼下へ振り下ろす。
そのまま、ウルフは消滅し、ポップアップが表示される。
【フィールドウルフを撃破! 15の熟練度を獲得!】
「はぁ……、驚かしやがって……」
「おめでとうございます、ツバサ様!」
「うむ、無駄は多いが、今日で大分上達したな」
余計なお世話だ、まったくもう……。
菊花とアリシアが俺をみてクスクスと笑う。
笑われるのもなんだか癪だが、ついつい釣られるようにして、俺も笑ってしまったのだった。
第四羽【王都到着】②
熟練度に関しては、いくつか疑問点がある。
たとえば、俺と菊花の能力の開きだ。
ここ数日の冒険では行動に差異はほとんどないように思われる。つまり、ほとんど同じことしかしていないのだ。
もちろん、魔物を倒した回数は菊花のほうが多いし、そういった部分の違いは、まぁ分かる。
しかし、それでも不自然に思われる箇所が多数浮かび上がるのだ。
たとえば、まるうさぎ系統の熟練度。
俺と菊花のウサギとじゃれ合った時間そのものは、それほど変わらない。
にもかかわらず、その開きは決定的とすら言えるものだ。
俺が現在ランク2の状態で菊花はもう4に上がっている。
それほどの差があっただろうか。あったならばそれは一体何処に……?
要因はいくつか考えつく。
たとえば、一つの行動に対しても素養によって伸び率に影響が出るというパターン。
まぁ以前少しだけ考えた才能という結論だ。
菊花はまるうさぎに対する執着はなにげに凄い。傍目にはそれほどでもないように見せているものの、たぶん語り始めると止まらなくなる手合いだ。そして、四六時中まるうさぎと共に居ても苦にならないだろう。それを一つの才能と取ることもできなくはない。
ただ、俺はもう一つの可能性についても、考慮し始めているところだ。
それは、アクションそれぞれに対して得られる熟練度に違いがあるのではないかということだ。
実は今まで、結構戦闘シーンを端折っていたから、まったく解説をしていなかったが、実は同じ魔物と戦った場合でも獲得熟練度に僅かな違いがあったのだ。
平均は大体15ポイント。
だが、倒し方によって得られる熟練度にばらつきが生じている。
これは魔物の成長度によってばらついているんだと思っていた。大物であればあるほど獲得熟練度も大きく、小物であれば収穫は少ない、というように。
しかし。
戦い慣れてくると俺だって対処の仕方というものが分かってくる。
この魔物にはこういうパターンで攻めるとラクだとか、そういうのが馴染んでくるんだ。
するとどうだろう。慣れれば慣れるほど、獲得熟練度が上昇していった。
そして、一つレベルが上がると途端に上昇効果はなくなり、元通りになった。
正直、分からないことが多くて困ってくる。
こういうときは先達に頼るのが人の知恵だ。困ったとき、縋り付く。これ、人類の知恵。
「ふむ。私も詳しいわけではないし、そういうのは何処ぞの賢者殿にでも伺ったほうが良いのだろうが……、う~む、そうだな……」
アリシアはそう言うと、顎に手を当てて唸っていた。
そうか、やはり脳筋乙女には荷が重すぎる質問だったか……。もっと相手を慮る必要があるか……。
「しかし、一つだけ聞いたことがあるのだが、たとえば剣を振るという動作だけでも熟練度の溜まり方には差異が生じると言われている。だから、騎士団ではより熟練度の向上値が高いと言われている振り方や鍛え方を〈作法〉と呼び、指導しているのだ。つまり、振り方によって熟練度の量は変わる。それと同様に戦い方でもそういう差異は生じるはずだ。剣の振り方と違い、戦い方は一辺倒ではないから一括りにはできないが、様々な戦い方をしたほうがより早く高い成長が見込めると聞いたことがある」
なるほど……。思ってた以上に騎士様は有能だったな。脳筋とか言ってすみませんでした。ちっ、反省してまーす。
「ツバサ様ぁ……」
なんて思っていたら、菊花には筒抜けだったらしく、ジト眼で睨めつけてくる。おいおい、どういうことだよ。もしかして、俺にはプライバシーとかないんだろうか。ちょっと不満に思うくらい良いじゃないですか!
まぁ、さすがに俺の目つきだけで思考を読み取ったとはいえ、行動に移していないのに攻められないとみたのか、それ以上は特に何も言うことはなく、菊花は溜息を一つ深く吐いただけだった。
はぁ……。なんで俺はこんなに緊張を強いられているんだろうか。……いや、まぁ俺の所為だわな。うん、すみません。
とにかく、熟練度に関しては、まだ分からないことが多く、未だ判然としない。
ただ、アリシアの指摘は的を射ているように思う。もう少し実験や考察をしてみなきゃな。
さて。
そんなこんなで、木々の合間を抜け、ボスの攻撃をかいくぐった先には再び街道の姿が見受けられた。
このまま進めば王都まではすぐだ、というのはアリシアの言。
俺たちはそのまま街道の踏破へと向かうのだった。
そんな折、菊花がなんともなしに呟いた。
「なんだか、この辺りにはネコさんが多いですねぇ……」
なんだかその言外にウサギはいないのかという不満が聞こえるような気もするが、きっと気の所為だろう。
アリシアも、それに頷く。
「うむ。やはりネコは良い。見ていて飽きないし、可愛いし、それにホラ……。あ! あそこにもいるぞ! ちょ、ちょっと撫でていってもいいだろうか……?」
なんか鼻息荒いヤツがいるな。そうか、コイツはネコ派だったのか……。
「にゃーにゃー。にゃ、にゃあー」
なんかネコ語喋ってるんだけど、この人。
ネコのほうはというと、気持ちよさそうに撫でられている。
この世界のネコは、見たところ普通のネコと同じだろうか。
いや……、額に宝石みたいのが嵌まっている。飾りなのか仕様なのかは分からんし、これが特殊なネコなのかこの世界では普通のデザインなのかも分からんが、アリシアは気にした様子もない。一般的なネコの姿なのだろう。
名称は〈トパーズキャット〉。毛色は黄色で、宝石も黄色だし、纏めてトパーズ系ということなのだろうか。
今までの魔物の傾向からすると、住んでいる土地によって名前が変わっているみたいだったのに、今回は色によって種族が違うのか……?
相変わらず、良く分からん世界観だな……。
それにしても……。
ここで見掛けるネコはトパーズキャットばっかりだな。それ以外は見当たらない。
地域ごとで違うっぽいな。たぶんだけど。
無心になってネコとじゃれ合い続けるアリシアの傍らで、同様に遊び始める菊花。
二人はいつの間にやら白いポンポンみたいな綿毛のついた茎を使って、遊んでいる。
ネコは眼前で飛び交う白いポンポンを追いかけてふしゃーとか言ってる。
……なんか、俺も混ざりたくなってきたぞ。
おかしいな、俺はイヌ派だったはずなのに……。ウサギに浮気して。そのうえネコだと……? 一体どうしてしまったと言うんだ……。
しかしまぁ……。どうでもいいや。
……俺は足下で見つけた白いポンポンを付けた草を一本引き抜いた。
――30分後。
うん。ネコは良いものだ。
俺、ネコアレルギーとか持ってなくてホント、良かった。
ふぅ、満足したし、そろそろ王都へ行こうか。気づけば日も暮れてきてるし。
俺がそう思って顔を上げると、そこには白いまるうさぎを抱えた菊花がいた。
……なに? どういうことだ……?
「……ようやく気づいてくれました。さっきから何回も呼んでいたんですよ?」
「キッカ殿が〈魔物調教〉の力で、仲間にしたそうだから、このまま連れていくぞ、構わんなツバサ殿?」
「え? ああ、そう」
なんかピアノラインが光るボカロ曲っぽく返答してしまったが、俺がネコとじゃれ合っている間に物語が進展していやがった。
ウサギ……、いないんじゃなかったのかよ。
「この子……、あの時の子なんですよ……? 私たちが最初に出逢った……」
そういや、いたな。こいつ……、あの時のヤツなのか……。いち早くオオカミの接近に気づいて逃げ出したまるうさぎ……。
あの時、俺たちにも知らせてくれてりゃ、あのオオカミにも遭わずに済んだんだろうが、しかし、遭えたお陰であのジジイともお近づきになれたことを考えると、ちょっとだけ責めにくいような……。
などと、俺の思案を余所に、菊花は抱えたまるうさぎと向き合うと、朗らかに笑顔を見せる。
「それでは、よろしくお願いしますね! ツバサ様、シロ!」
……やっぱり名前はそれで行くらしい。ま、いいけど。
第四羽【王都到着】③
ことり、と空にした器をテーブルに置いたアリシアは沈鬱な表情で呟いたのだった。
「……まずい」
「いや、美味いけど……」
「ホントですよ! 謙遜しないでください!」
「あ、いや……。それはお粗末様だ。……って、そうではなく……」
こほん。一つ咳払いして居住まいを正すと、こう言った。
「不味いと言ったのではない。このままではまずいと、そう言ったのだ。……金銭的な観点からな」
金銭。……うん、まぁ分かるよ。言わんとしていることは。
そうだよね。そりゃ困るよね。まずってしまうよね。そうだ。そりゃ仕方ないよ。
人間、お金がなきゃ生きていけないし、お金がなくて死ぬことだってある。
お金大事。命の次くらいに大事にしたいものだ。
そうなのだ。それくらいは分かっているんだ。
しかしまぁ、逆に考えてみたらどうだろうか。
お金がなければ苦しいと言うけれど、実際お金がなくたって自給自足で暮らしていくことは不可能ではない。
食べ物を作れる環境と、雨風が防げる場所さえあれば、人間は意外と生きていける。
つまり大事なのはお金ではなく、お金を使って得られるものであり、それは即ち、お金はなくたって生きていけるということの証左に他ならない。
まぁつまり何が言いたいのかというと、それはもう、単純明快に、爽快かつシンプルに導き出される回答だ。
働くたくない。
拙者、絶対に働きたくないでござる! 絶対に嫌でござる!
俺は俺の本懐を遂げるため、まずはそういう方向に会話を誘導する必要があるだろう。
まずは、お金の必要性。そこから切り崩す必要があるだろう。
「待て。まず考えてみるんだ。お金がなくたってご飯は食べれるだろ?」
「……物乞い、ということか……」
「盗み、です……?」
いやいや、二人して発想が後ろ向きすぎるだろ。パンが食べれないのならパンを作れば良いじゃない。俺ってばどんだけマリーさんの引用好きなんだろ。……それはともかく。
「自給自足って言葉があるだろ……? 食べるものも着るものも、自分で調達できれば、働かなくたって生きてけるだろう? なぁ、アリシア」
「……ふむ。いわゆる冒険者としての生き方に則してはいるのだが、……あまり歓迎したくはないな」
「食べ物だけなら調達したものでなんとかなるかもしれませんが……、それでも安定した供給とは言えないかと……」
う~ん、やっぱり無理なのだろうか……。
どうにかしたい。どうにかして働かない環境を構築したい。仕事なんかしたくない。遊んで暮らしたい。むぅ……。
「ギルドで仕事を請け負うのが、やはり無難だと思うぞ?」
「う……仕事……」
「……段々、ツバサ様が絵に描いたようなニートになりつつあるのが悲しいです」
ぶ、無礼者め。成敗してくれる。
菊花へ鋭い眼差しを向けてみるものの、にっこり笑顔で返された。……なんだこれ、逆に怖いぞ。
アリシアはというと、そんな俺たちの顔色に気づかずに説明を続けている。
「俗に言うクエストと呼ばれる依頼だな。なに、仕事だと思って肩肘張るような必要はない。今まで通りに道行く魔物を倒し、採取した素材を提供するくらいのものだ。一攫千金などとはいかないが、旅の資金くらいはどうにかなるだろう。……あくまで身の丈にあった旅、という前提はあるがな」
「ギルドというのは、一つなんですか?」
「いや、かなり種類がある。私も正確な数までは把握していないが、小さなギルドを含めれば数百はあるだろう。有名どころでは、〈西方同盟〉、〈東方連盟〉、〈北部合同会議〉、〈南部互助会〉などだな。これらはかなり大きなギルドだから、冒険者への依頼の斡旋のほかにも行商の取り纏めなども行っていて、ある種一つの国に匹敵する存在だと言えるだろう」
会議とか互助会とか、どうにもギルドっぽくない名詞まで混ざっているんだが……。
「……ふむ。その辺りは私もよく知らんな。昔からそういう名前だったし……。考えたこともなかったな」
「小さな集まりが急に力を増して、次第に大きな発言力を持つというのも、歴史ではままあることですけどね……」
そういうもんだろうか……。だったら、途中で名前を変更しても良さそうなものだが……。
「一度定着した名前を変えるのも難しいのだろう。変える意味もあまりないしな」
疑問に思うのは異世界の人間だからかもしれない。……まぁそういうもんかもな。
「とりあえず、キッカ殿と私でギルド会館へ向かおうと思う。ツバサ殿の獲得したアイテムをキッカ殿へ渡してくれないか?」
「……? 直接アリシアへ渡すんじゃダメなのか?」
「いや……、いきなり私が預かって平気なのか? 旅の道連れとはいえ、まだ出逢って日も浅い。私に預けるのは不用心に過ぎなくないか?」
「いや、気にしないし……。なぁ、菊花」
伺うと、菊花も頷いた。
「ええ、気にしなくてだいじょうぶですよ。アリシアさんはキチンと私たちの仲間なんですから!」
まぁ、街道では命を預けて戦っていたのだし、確かに今更という気はするな。
すると、アリシアは途端に頬を染める。
「そ、そこまで信用してもらえるとはな……。勇者ならともかく、貴君らに認めてもらえるというだけで、私は、その……。いや、なんでもないぞ! よし、ならば行こう。せっかくだし、キッカ殿にも会館の使い方を説明しておこうと思う。ツバサ殿は……、慣れない旅で疲れただろう。シロと休んでいると良い」
「そうですね……。シロまで連れて行くのも先方に迷惑かもしれませんし、ここは、ツバサ様とお留守番してもらいましょうか。……シロ、良い子にしているんですよ」
シロは、きゅっ! とウサギらしからぬ鳴き声で応じると、俺の隣に腰を落ち着けた。……いや、腰っていうパーツがどこらへんかは分からないけどな。全体的に丸っこいし。
しかし、俺の意見はガン無視だな……。いや、反論があるわけじゃないんだけどさ。
菊花とアリシアは連れ立って部屋を出てしまい、俺はシロと共に取り残された形だ。
さて、どうやって遊ぼうかな。
俺がシロの背中をさすってみると……。
(ああ……、そこじゃないっす。……もう少し上……。ああ、そこっす。そこがたまらないっす……)
なんだか小物っぽい声が聞こえた。
なんだろ、この売れない声優が当てた声みたいな三下感……。それに俺が撫でている動作に同調しているような気さえするんだが……。
「ま、まさかとは思うが……」
ステータス画面を確認してみる。
……熟練度が向上している。〈まるうさぎ〉の項目がランク3に上がっている。……スキル〈魔物言語〉を習得している。
更にそこから展開すると、まるうさぎの項目が明るく表示されている。
……ひょっとして。
「お前なのか、バ……」
(シロっすよっ! バ……てなんすか! オイラ以外の誰の声に聞こえるっていうんすか!?)
もちろん、バッツなわけがなかったが、それだけは信じたくなかった。夢であって欲しかった。
しかし、現実は小説より奇なり。
俺にできることは、思いの丈を叫ぶことしかない。
「キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタアアアアアアア!!!」
第四羽【王都到着】④
あ……ありのまま今起こったことを話すぜ!
菊花が仲間にしたウサギ、シロの言葉が突如分かるようになっちまったんだ。
な……何を言っているのかわからねーと思うが、俺も何が起きたのか分からなかった……。頭がどうにかなりそうだった……。
腹話術だとか超展開だとか、そんなチャチなものじゃ断じてねえ。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……。
そして、その声はというと、なんとも冴えない感じで、可愛くもないし格好良くもない。なんか小物というか雑魚というかモブというか、とにかく冴えない。
俺は驚くままにハッピーセットの中身に歓喜する子供のように、発狂したような声を上げたんだ。
たぶん明日にはニコ動あたりにMADが上げられているに違いない。BGMはナイト・オブ・ナイツで頼む。あるいは、一番良い装備を頼む。
(そんな挙動ばかりとってると虐められるっすよ?)
余計なお世話だっつーの。誰の所為だと思ってるんだ、まったく。
あと、子供たちに罪はないだろ。虐めるならそれを指示し、あまつさえ放送を許可した大人たちをこそ虐めるべきだ。可哀相だとは思わんのかね?
はぁ……、それにしてもショックだ……。叶うなら人気女性声優が演じたような可愛い声で喋って欲しかったよ。あるいは裏をかいて、ダンディーな男性声優とかでも良かったんだが……。くっ……、よりによってこんな三下ボイスだと……。
やはり世は不景気だということか。声優さん雇うのもタダじゃないからなぁ。ちくしょう……、今からでも代役きかないだろうか。くぎゅとかはなざーさんとかあいなまあたりに頼めないものだろうか。10万くらいまでなら頑張って払うからさ。
(……なんか、失礼なことを考えているような眼っすねぇ……)
しかも誰かに似て、勘が鋭いときた。そういうとこは飼い主に似なくて良いんだよ。むしろ声を似せて欲しかった。それだけで俺は幸せになれたというのに……。
世は無情だ。世界は不条理に突き進んでゆく。俺たちはその荒波に流されることしかできない。
その流れに逆らうなんて、きっと人間には許されてはいないのだろう。ましてやただの人間には尚のこと。
俺たちは物語の主人公ではない。……少なくとも英雄譚に語られるような存在ではない。
そんな俺には、僅かな幸福すら望めないというのか。
そんなささやかな幸福さえ……。
……なんかウサギがじとーっとした眼で俺を見つめている。
……俺の思考ってそんなに読みやすいのかなぁ……?
「ただいま帰ったぞ」
「お待たせしました」
気まずい空気に堪えること数分、救いの手はようやく訪れたのだった。
ウサギに睨まれ萎縮する主人公の図は、あまりに表現に苦しいものがある。そんな状態をあの手この手を使って言葉巧みにおもしろおかしく描写できるような文章力はないので生憎と割愛させていただく。全く以て致し方ないことである。西尾維新じゃないんだからそんなの無理だっての。
「良い子にしてましたか?」
菊花が尋ねると、ウサギはきゅっと鳴き、菊花へダイビングする。
(間が持たなかったっす! すまないっす、ご主人!)
「あは、緊張しちゃいましたか? だいじょうぶですよ、ツバサ様は素晴らしい方ですから!」
菊花の眼は相変わらず曇りっぱなしらしい。盲目的献身は魔物相手でも揺るがないらしい。「らしい」といえば「らしい」んだが、……いつかとんでもないしっぺ返しが来そうでちょっと怖いな。まぁ気の所為であることを精々祈るとしよう。
……シロはそんな菊花を見て、一つ溜息らしい呼気を放つ。なんだか言葉が聞こえるようになってから、妙に動作が人間的に見えてしまって、どうにも変な気分だ。
聞こえなければ感情移入の一言で片付けられたというのに……。なんだかなぁ。まぁいいか。それよりも、考えるべきことがあることだし、気持ちも切り替えよう。
「それで、菊花。勇者の情報は見つかったのか? アリシアが置いて行かれてそれほど長く経ってはいないんだ。そんなに遠くにはいないだろ?」
「ああ、そうでした。それがですね、ツバサ様――」
「――情報なら手に入れている。勇者一行は賢者に会いに向かったらしい」
賢者……。
やっぱり偏屈なお兄さんなんだろうか。どうしてもロトの賢王を思い出してしまうのは、由緒正しすぎる勇者様、アルスの所為に違いない。
「どうにも、何もしたがらない方らしいんですよ」
「無駄なことはしない、という主義らしいのだが……それを怠け者のように捉えるものも多く、周囲の人間の評価は著しく悪いそうだ。それでも彼が賢者と称えられているのは、ひとえに賢者の知恵を継ぐ一族の末裔だからなのだそうだ」
知恵を継いだ怠け者、ね……。
知恵がある故に働くことに意味を見いだせないのか。あるいは、単純に自分の理屈を重視するが故に周囲と馴染めないだけなのか。
いずれにせよ、コミュ力の高い相手ではないだろう。それはつまり、対応を誤れば力を得るのが困難になるということに他ならない。気分を損なえば協力は取り付けないことだろう。
なんともめんどくさそうな相手だ。
しかも情報は少ない。そのうえ、仲の良い相手もいなそうだし、攻略の糸口を探しようもない。結構手詰まりな感がある。
……だいじょうぶだろうか。
「さて! それじゃあ、一休みしましょうか」
「そうだな……。少し足を休めるとしよう」
「いやいやいや、ちょっと待て!」
俺は咄嗟に二人を制止した。この流れはまずい。なんとしても断ち切らねばなるまい。
何故ならば、それは俺にとってあまりにも不利な状態になりうるからだ。
こちとら、記憶も無し。常識も無し。あるのは煩悩とゲーム知識のみというどうしようもない有様なのだ。
だからこそ、譲れない。避けられない行動があるのだ。
俺は!
俺は……ッ!!
「まだ王都を全然見てないんだけど!」
だってそうだろう。タイトルを王都到着としてしまった以上、王都を描写せずに終わらせて良いわけがない! それを捨てるなんてとんでもない! ……というやつだ。
「観光したい、ということか……?」
「いっそ敢行したいくらいだ」
「うまいですね、ツバサ様! さすがです!」
……あれ? なんか馬鹿にされてる……? いや、菊花はこういうとき嘘は吐かないタイプだ。つまり本心だろう。というかツバサ様補正が掛かってるだけっぽいけども。……あるいはセンスが古いだけかもしれないけど。
……なんて考えてるとまたジト目で睨まれるかもな。ほどほどにしておこう。
まぁ、とにかく記憶もないんだ。思い出くらい作らせてくれ。できれば可愛い女の子と嬉し恥ずかしデートみたいなシチュエーションで。そして、美味しいご飯食べて、綺麗な夜景を眺めて、静かなところで互いを見つめ合った後、重なり合う影と影。そのままカメラはパンアップ。そこから時間は一気に進んで、同じベッドで目を覚ます二人。それはもう、そういうイベントがあったと匂わすわけだ。あとはご想像にお任せします的な。いやー、参っちゃうな。ほら、俺ってば色男だから。モテてモテて困っちゃうくらいだから。まいっちんぐだから。
「ツバサ様……」
やっぱり読まれてるよ! 怖いよ!
ふふん……、分かってるって。どうせ、この声も聞こえてるんだろ、菊花さんよ。
「まぁ、せっかくの王都ですし、出掛けましょうか、アリシアさん」
「……む? まぁ、そうだな。私には今更なところではあるが、観光とあれば案内しよう。私も騎士の端くれ。街の名所巡り、その役目、確かに仰せつかった」
心優しい菊花さんは俺の心を汲んでくださった。ありがたやありがたや。
だが、ここからは一瞬の油断が精子……、じゃなかった生死を分ける絶対領域だ。油断せずに冷静に、それでいて大胆に繊細に攻め込まねばならない。
この戦い、敗北は許されない。男の未来を賭けた壮大なバトルになる。……俺は輝ける明日を掴めるだろうか。
扉が開かれ、菊花とアリシアに続き、俺……とその頭上に乗っかったシロが通り抜ける。果たして俺は、男のロマンを果たすことができるのだろうか。
……やがて、戦いの火蓋が落とされることになる。
第四羽【王都到着】⑤
わいわいがやがやとした歓楽街を抜けてゆく。
狭い通りを荷物を抱えた小男やおばさんがすいすいと擦り抜けてゆく。その所作はまるで当たり判定がないかのように悠然としている。ゲームだと言われた方が納得がいく動作だな。
俺はというと、道行く人の足に引っかかって転びそうになったり、飛び出してきた男の子に体当たりされたり、頭上からずり落ちてきた暖簾みたいな布に引っ掛かったりしているうちに、菊花やアリシアからどんどん置いて行かれている。
ま、待って~。置いていかないで~。
なんだかんだで俺は未だにコミュ障だ。見知らぬ人に囲まれた状態はあまりに辛い。怖い。耐えがたい。
だが、早足になればなるほど、注意が疎かになり足下がおぼつかなくなる。
蹴躓き、バランスを崩した俺はそのまま受け身も取れないまま地面へと倒れようとしていた。
足下は石畳。当たり所が悪ければ最悪、死ぬかもしれないな……。そんな、どこか諦観に満ちた感想を思い浮かべた刹那、俺の身体はぐいと、持ち上げられていた。
見上げれば、そこには……。
「危ないな……。まったく、見ていられないぞ、ツバサ殿。仕方あるまい。いいか、この手を放すんじゃないぞ?」
赤毛の女騎士様が、まるでお姫様を支える王子のような所作で俺を抱えていた。
……きゅん☆
見つけた……、私の王子様っ……!
(完全に立場が逆っすね……)
「……むむ」
俺が乙女心に目覚めていると、頭上から呆れたような声と、脇から悔しがるような少女の声が聞こえる。
いやぁ、まぁ逆なのは分かるんだけどさ……。だがしかし、アリシアの騎士っぷりが予想外にナイスガイなんだ。(ちなみにダジャレだ。大いに笑うがいい)
思わずヲトメってしまってもそれは詮ないことだと思うんだ。
それにしてもアリシア、スペック高いな。女子力も高ければ戦闘力も高いし、そのうえ王子力も高いだと……? 完全無欠とはこのことか。
……ああ、頭はあんまり良くないんだったか? まぁそこは確かに、アレだけど。それはそれとして。
俺は緊張しつつも、女騎士のその、華奢なようで意外としっかりしたその手を握り返したのだった。
アリシアに引かれて、歩き始めて思ったのは、その力強さが思っていた以上だったということだ。
これは意思力の成せる業なのだろうか。それとも熟練度システムの恩恵でこうも力強いのだろうか。
ぐんぐんと進むその小さいようで頼りがいのある背中は、迷うことなく前へ前へと突き進んでゆく。
いや、ホントに、きゅん☆ ……ってなるわ、これ。この騎士様超かっけー。ぱねえ。
……なんて思っていると。……ひしっ。
俺の、空いた左手を細い腕が引き寄せていた。
「ツバサ様をエスコートするのは、私の役目ですっ!」
菊花が負けじと意地を張っていた。
そんな様子に、アリシアの大和魂に火が付いたらしい。
「……いや、客人をもてなすのは、貴族の務めだ。ここは私に任せて欲しい」
「いいえ、ツバサ様の先導は私の役目です。貴族様にはもっと大事な役目があるでしょう? そちらを優先して構いませんよ?」
「いや、しかし……、途中で投げ出すのは騎士の名折れだ。ここまで来た以上、役目は私に任せてくれないか?」
「結構です! ツバサ様をお守りするのは私です! 私じゃなきゃ、ダメなんです!」
「な……ッ! 私だって負けられないぞ! 平民を守るのは貴族の領分だ! これだけは譲るわけにはいかない!」
……だんだん修羅場ってきたな。俺の従者と女騎士様が修羅場すぎる。……ってアニメ化しそうなタイトルだな。
そんな二人の鋭い視線が交錯するが、その交差点にいるのは俺だ。……俺は露骨に危機感を覚える。
……ここは、どうにかして俺が二人の矛先を収めさせなければ……。
まずは先んじて動くべきか……?
「……えっと、じゃあ、二人が先導してくれるとありがたいかなー……、なんて……」
「そんな道幅はないだろう」
「狭い道を占有したりしたら、街の人たちに迷惑が掛かっちゃいますよ」
どうして、そういうところにはしっかり良心が働くんだろうね。ふっしぎー!
「キッカ殿が抑えてくれれば全ては丸く収まるんだがな……」
「それはこちらの台詞ですよ。騎士様が遠慮してくれれば万事解決なんですから」
……この子らは……。
はぁ……、こういうとき、俺はどうするべきなんだろうね。たぶん、生易しい選択肢じゃ正解には至れない気がするんだよな……。
となれば……、どうしたもんか……。
平和的にこの場を収めるには……。どちらかを選ぶのが一番簡単だが、それはどちらかを傷つけることになるだろう。それは正解ではない気がする……。
どちらともを選ぶ……。あるいはいっそ、両方とも選ばない……? そういう選択肢もあるのか……?
……考えろ。ギャルゲーで鍛えた知識を総動員させろ。全てを救い、二人を守る。そのために俺にできることは……。犠牲にできるものは……。
俺は……どうすべきなんだ……?
「ツバサ殿……。其方に決めて貰うべきだろう? なぁ……」
「そうですね。ツバサ様に選んでもらいましょうか。さぁ……」
「どっちなんだ!?」「どっちですか!?」
究極の二択、キタコレ!
どっちを選んでもロクな明日が来ない気がするよ! そこはかとなくそんな気がするんだよ、とーま!
……どっちを選んでも、か。いいぜ、だったら、俺の答えは、そのどちらでもない。そしてそのどちらでもある究極の解答を答えさせて貰おうじゃないか!
俺の煩悩を甘く見られちゃあ困るぜ! いいか、目ン玉かっぽじって、よ~っく見ておけよ、アホンダラ!
俺は、俺はなぁ……!
「菊花、アリシア……。今すぐ人気(ひとけ)の無いところに行きたい。そこで3×でセ×××したい。今すぐセ×××したい。嫌がる二人の衣服を××して、俺の欲望のままに膨れあがる×××を思いのままに解放したい。お前らの×れた×××に男のシンボルそのものを××して、可憐な花を咲き誇る様を見せて欲しい。三人の愛の結晶が着床するまで迸る××を飽きるほど×××したい。肉欲のままに夜を明かしたい。白い肌を白い××で汚したい。邪魔な衣服を剥ぎ取って、そこに愛の証を刻みつけたい。その可憐な唇からこぼれる淫靡な吐息を杯に淫らな夜を過ごしたい。君らをギターに見立てて、夜の演奏会をしたい。狂宴を彩るのは薔薇と菊の新芽がいい。新芽が咲き誇り、枯れ逝く様を肴に、最高の夜に想いを馳せたい。そのためならば、俺はなんだってしよう。何にだってなろう。何度でも言うさ。俺はお前らとセ×××がしたい。いいだろう? そんなに求めてくれてるんだ。同じ求めるなら、俺は身体を貰って欲しい。いっそ俺の××をもらってくれ。その手で優しく介抱してくれ。そして、俺の劣情を解放してくれ。そして、俺と家族になろう。血と肉を貪りあった、淫靡なる家族になるんだ……」
言うべきことは言った。全部言った。たぶん言わなくてもいいようなことまで余ることなく伝えきった。我が生涯に一片の悔い無し。
あ、嘘。まだ果たしてないから、まだ死ねない。肉欲の夜を迎えるまで、俺はまだ死ねない。
……えるしっているか。よくりゅうもリンゴしかたべない。
攻略者っていうのは、何も世界を攻略するってだけのタイトルじゃあないんだぜ?
これはヒロインも攻略する物語なのさ!
……そんなことを思いながら、二つの鉄拳が俺の顔面に突き刺さり、俺の意識はそこで途絶えた。
我ながら、天晴れ也。
to be continued...
あとがき 四羽
①結局、まとめのようなお話に。
しかしまぁ、そろそろいい加減タイトルに関しても触れておこうかなと思った次第です。
あと、ツバサのスタンスをいい加減定めようと思いました。
女の子に負けたくない。そんな下らない気持ちですが、その本流の部分は、決して自分本位なだけではないと思います。
賞に応募するにはあと5万文字くらい書かなきゃいけないんですが、たぶん無理。マイペースに更新します。
第四羽は次回から本格化すると思います。よしなに。
②全然進んでないじゃん。
そんな感じの②でした。
さりげなくシロが仲間になりました。
シロとの共同生活、そして、王都での情報収集が次回の内容です。
③某マックなネタですみませんでした。
ウサギが喋るから派生するネタとしてはそれしかないかと思ったので。
分からないかたは是非動画サイトで検索してみてください。シャベッタとかで調べればすぐ見つかるかと思います。
あと、更新が遅れ気味ですが忙しいのと体調悪いのとモンストとモンハンの波状攻撃で執筆時間が確保できません。
それどころか健全な読書タイムすらない有様です。
……本当に申し訳ありません。
④王都を描写してない云々はまさしくセルフツッコミです。
というわけでせっかくなので次回は王都篇最後のデート回。僕の筆力ではおそらく一回分が限界です。
甘々な展開を目指してがんばります。
⑤……全然甘甘な展開にはならなかったんだぜ。
むしろギスギスなんだぜ。どうしてこうなった。
しかもオチも酷い。……なんか本当にすみませんでした。
……次回からは賢者篇です。例によって賢者が出てくるまで時間が掛かるかもですが、あんまり気にしないでくださいね!
……結局全然王都を描写してないような……。
一応、歓楽街は王都の中でも一部の地域です。大通りはさすがに夜だと閉まっているため、アリシアは夜でも活気のある場所へ招待しました。その結果がアレです。
……もし次の機会に恵まれるようだったら、また王都を書くかも……。まぁ大して設定考えてないから無理して出すこともないんだけどさ。
伏せ字の部分。直接書くとまずそうだなと思った表現のみ×で伏せてます。淫猥な単語のみ消してるわけではありません。まぁわざわざ解読しようとする人はいないだろうから、なんとなくヤバそうな単語を使ってると思っていただいても構いませんが……。